ラグビーW杯2019『日本対南アフリカ』感想・レビュー。2015の再来ならず

ラグビーW杯2019の日本対南アフリカ戦の評価・感想を記事にしました。

未知のステージにて2度目のリベンジマッチ

2019年10月20日、予選プール全勝での決勝トーナメント出場およびベスト8という、国内ラグビーにおける歴史的偉業を成し遂げた「ブレイブ・ブロッサムズ」こと日本代表と、ワールドカップ優勝経験もあるティア1屈指の強豪「スプリングボクス」こと南アフリカ代表の一戦が行われました。

本試合のテレビ瞬間最高視聴率は関東で49.1%、関西で47.9%かつ、平均視聴率も関東41.6%、関西41.4%で日本国が一丸となったと言っても過言ではないものだったようです。

先日のスコットランド戦に続いて、2015年の前回大会を思い起こさせる対決に偶然とは言い難い因果を感じますが、今回は「史上最大の大番狂わせ」と呼ばれた前回とは勝手が違います。

大会前に世界ランキング1位まで上り詰めたアイルランドを撃破し、前回大会を凌駕する圧倒的なパフォーマンスを見せつけ、間違いなくティア1の実力という評価を世界に言わしめた日本に対して、テストマッチを除けば4年越しのリベンジです。開始から本気で仕掛けてくる事は誰の目にも明らかでした。

下馬評では劣勢の見立てが多いなか、アイルランド戦・スコットランド戦と山場を乗り越えた日本代表は「にわかファン」という言葉が注目されるくらい人々の心を動かし、多くの日本国民を味方につけたので、不利でも彼等の勝利を信じる声がそこら中に溢れていました。

2大会連続で快挙を成した日本代表の快進撃はどのような幕引きを迎えるのか、世界中が釘付けになるなか試合は始まります。

2015の再来を思わせる僅差の前半

前半は早々にトライを取られたうえ、地力で勝る南アのモールやスクラムに苦戦するものの、そう簡単にお株を奪わせない、具選手も雄たけびをあげた渾身のスクラムが引き寄せた田村選手のPG(ペナルティゴール)によって食らい付く展開となりました。

お互いにアンストラクチャー(陣形が崩れた状態)を狙う場面が多いなか、山中選手や松島選手を中心としてハイボール(ハイパントで高く蹴り上げられたボール)の処理が非常に上手く、福岡選手も含めた快速ウイングにボールが渡る局面もあったものの、南アのディフェンスの出足とカバーが非常に早くスピードに乗る前に2,3人に潰されてしまい、これまでの戦いになく日本の良さを出し切れない苦しい展開でした。

しかしその出足の早さが仇となったか、稲垣選手への危険タックルを含めて南アのミスが非常に多かったこともあって、前半の流れは確かに日本に傾いていました。トライを取れなかったのが心残りでしたが、流れを持ちつつ僅差で食らいつく展開は2015を思い起こさせ、試合で高揚した気分の中では日本の勝利を期待させる戦況に見えました。

地力と余力の差が響いた後半

逆転の希望が残された状態での後半戦となりましたが、疲労の蓄積により徐々に地力の差が出始め、モールを止められなかったり、ラック(ボールが地面に落ちた時の密集)の形成が出遅れたりと、前半から勢いが衰えぬ南アのプレッシャーに力負けする場面が増えてきてしまいます。さらにはラインアウトも攻略されセットプレーでの力量差も広がり、日本の良さがことごとく潰される悔しい状況になりました。

4年前の焼き直しに見えた前半に追い詰めていたのは日本ではなく、南アフリカの方だったと冷静になってから気付きました。

最終的に2トライ1ゴール、3つのPGを後半に奪われてしまい3対26という完敗のスコアとなってしまいましたが、前半の健闘とこれまでの快進撃を踏まえると、個人的には悔しさよりも死力を尽くした日本代表への誇りと南アフリカ代表への敬意が勝る清々しい敗戦でした。

この戦いで痛感した身長を含めたフィジカルおよびプレッシャーの差や、スコットランドに見せつけられた控えチームでも格下に圧勝して主力を温存できるような「本当の層の厚さ」など、さらなる課題が浮き彫りになりましたが、これらは予選プール突破という快挙を成し遂げた事で見えた次なるステージであり、今大会の経験とともに次代へ継承されるものです。

今はジャパンラグビーを新たな高みに引き上げ、日本全体を「ONE TEAM」にしてくれた日本代表チーム全員にただ「ありがとう」と「お疲れ様でした」の言葉を送りたいです。

将来の展望

日本代表選手も多く所属する社会人ラグビーの「ラグビートップリーグ」が2020年1月にリーグ戦開幕となり、そのチケットが11月10日から販売開始します。

ジャパンラグビーの現状はこのプロとアマが混在する社会人リーグが最高峰で、それとは別にニュージーランド・南アフリカ・オーストラリアといった強豪国のクラブが中心の国際大会「スーパーラグビー」に日本チーム「サンウルブズ」がジャパンラグビーの強化を目的に参加していましたが、2020年を最後に除外が決まってしまっています。

さらなる高みを目指すためにはラグビーの普及だけでなく、この充分とは言えない国内環境をレベルアップさせることも必要不可欠で、現在はプロリーグの新設が2021年秋を目標に議論されているとのことです。

日本代表選手は全てを犠牲にして各種メディアで取り沙汰されるほどの過酷な練習を行っていますが、努力に見合うほどの対価を与えられているとは言い切れない現状です。

それでも日本代表が灯し続けている火を絶やさず、新たなステージへの到達を後押しするために、サポーターに何ができるか考えなければいけませんね。

手っ取り早い支援としては、現在JRFUというジャパンラグビーの有料会員サイトがありますので、こちらに入会することでより近くから日本チームへ声が届けられると思います。

参考 日本ラグビー協会メンバーズクラブサイト

2023年はフランス大会です、選手だけでなくサポーターも次を見据えて出来る限りの応援をしていきましょう。

余談ですが、カナダ代表やナミビア代表に続いて、アイルランドチームのスタッフが千葉県市原市のボランティア活動をしてくれたようです。本当に感謝しかありません。

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