『苦しかったときの話をしようか』感想・レビュー。10代、20代は絶対に読むべき本

ビジネス書『苦しかったときの話をしようか』の感想・書評を記事にしました。

まず始めに、この本は自己啓発や自己分析、ビジネスキャリアを考える本においては傑作だと思います。10代、20代の進路に悩む若者だけでなく、それ以上の年齢で自分のキャリアを見つめ直している方も絶対に読むべきオススメの一冊です。

父から子へ送られる、誠実かつ飾らない手紙

本書の内容としては、10年ほど前に経営難に陥りかけていたUSJの業績をV字回復させたエピソードが各種メディアで取り上げられた、本書の著者でありマーケターの森岡 毅さんが、進路に悩んでいる自身の娘に向けた、普段の会話では伝えられない具体的なアドバイスやエール、自身や家族のエピソードをまとめた本となっています。

この父から子へ送る言葉という点が本書のミソで、実際にそのために書いていた物を書籍化しただけあって、本当にすんなりと受け入れられる優しく分かりやすい文章で書かれています。

著者や家族のエピソードはなかなか壮絶で、ハードな体験談を読むことができます。

森岡氏は引く手あまたの中からP&Gに就職しただけあって言わずもがな優秀であろう方なのですが、毎日が憂鬱ながらもムリヤリ奮起して出社したり、血尿を出したり、現在も残るトラウマ的なものが根付いたりと、輝かしいキャリアの中身は苦労と苦悩の連続であった様子が綴られています。

大多数の人はどこかで心が折れて立ち直れなくなったり、満足して留まってしまうであろう経緯なので、圧倒的なポテンシャルとバイタリティを備えた方なのがうかがえます。

このことから数々の言葉は生存バイアスがかかっている事は間違いないのですが、それを親から子へのメッセージというコンセプトが中和してくれています。

自分の強みを理解し、どう生きていくか

進路を考えるにあたり、自分のやりたい事などが見えてこない娘さんへ向けて、本書は自分の好きなこと(自分がハッピーになること)から強みを引き出して、それをどう社会へマーケティングして、現実と折り合いをつけながら強みを伸ばしてキャリアを積み重ねていくかの方法が論理的に記されています。

論理的とは言っても小難しいことは殆ど書いておらず、自分の特性を理解するために、自分の好きなことの動詞を思いつく限り挙げることから始まります。さらにその動詞を3つの傾向(Thinking,Communication,Leadership)に分類することで、自分の特性が見えてくるそうです。

そして自身の強みに関する部分で私がとても共感したのは下記の一節です。

今までの高校や大学の君の周囲には、君のような、あるいは君から見て君よりも”考えることが得意”に見える人たちも多くいただろう。だから君は自分の宝物が明確に見えなくなっているのかもしれない。でもこの宝探しのルールは、外との比較ではなく、君の内側での凸凹比較だ。
内側にある飛び出した特徴を探すと、やはり”考えることが得意”なことは、君にとって大切な「宝物」なのではないかと思う。
そこで君によく考えて欲しいのは、君の人生における時間の使い方として、その宝物を必死に磨くよりも大事なことが他にあるのだろうか?

学校というのは本当に特殊な環境で、十人十色の人間が集まるうえに、限られた基準と短期の結果で優劣をつけられ、家族の次に共生しているであろう同級生の様々な一面を見て、多感な時期にたくさんの刺激を受けて、自分探しどころではいられない状況かと思います。

社会性を養う裏で他人と比較し続ける半生を送り、自立をするにあたって自分という唯一の存在が曖昧になった時、上記の一節は時代が変わっても揺るがない、若者へ向けた人生の真理ではないでしょうか。

同じ不安なら挑戦する方を選ぶべき

もうひとつ強く印象に残る一文があり、こちらも現代社会において必要な心構えだと思います。

理性的に正しい判断をしたつもりでも、変化やリスクの少ない方を頭の中で正当化して選んでしまうのが人間だ。
どちらの道にも不安があるなら、挑戦する”不安”の方を選択するべきだ。挑戦する”不安”は善良だと認識することで、そのストレスにも慣れるし、友達にさえなることができる。挑戦する”不安”は、君の未来への投資なのだ。
そのストレスから逃げるということは、つまり失敗するようなリスクを取らないということは、何にも挑戦しないことを選んでいることになる。そして後々、”永遠に拭えない不安”というもっと悪質な闇に取り込まれることになるだろう。

今の日本は老後を含めた先行きの不安ばかりです、森岡氏も本書でこの現状を危険視しており、さらにその危機を打破するためには強みに特化したビジネスマンが日本で増えていかなければならないと言っています。

この一節は聞きなれた言葉に言い換えれば「やらない後悔よりやる後悔」でしょうか。人は自然と変化を拒みますが、変化することで結果はどうであれ見聞が広がり、変化する事への耐性がつきます。

何もしないというのは現状維持と見せかけて「何もしない」という選択をしており、無論その結果も付いてきます。

人生は何が起きるか分かりません、現状維持していたつもりでも明日仕事が無くなるかもしれませんし、昨日までの穏やかな一日が一変するイベントも起きるでしょう。

何もしない事によって取り返しのつかない結果に陥る不安の芽をそのままにしておくより、つどその芽を摘み取ろうとする選択をした方が、前に進んでいけるんだと思います。

立ち止まる若者の背中を優しく押してくれる本書は一生に一度は読んでおくべき本です。

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