名作の漫画、面白い漫画というのは往々にしてキャラクターの魅力に溢れ、発せられる言葉には実在の人物にも劣らない重みが感じられます。今回はそんな漫画の名言を私が5つ選んで紹介します。
嘘喰い「機会(チャンス)とは、それを生かせる者の頭上にのみ乱舞する」
『嘘喰い』13巻140話「国家はあきらめない」より
嘘喰いは圧倒的な洞察力や推理力・知識を備えたギャンブラーです、多数の策を張り巡らしながら敵の策を看破し、時に利用してしまいます。ただ彼の強さはそれだけでは無く、勝負に勝つために必要ならば自らのかけがえの無い物、時に命すら平然と賭けのテーブルに差し出す豪胆さも持ち合わせています。
さらに嘘喰いは自分の勝ちが叫ばれるその瞬間まで、策を講じ続ける手を絶対に緩めません。ギャンブルに絶対は無い、その言葉を自ら体言するかのように、策やベットしたコインが無駄に終わる可能性も厭わず種を撒き続けます。絶対は無いと確信しているからこそ絶対的な勝利に誰よりも近づく事ができる。嘘喰いは極限まで研ぎ澄まされたギャンブラーとしての矜持を見せてくれます。
ジョジョの奇妙な冒険:五部「結果だけを求めてはいない(中略)大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている」
『ジョジョの奇妙な冒険』5部(59巻)「今にも落ちてきそうな空の下で」より
結果だけを求めていると過程が疎かになるうえ、現実とのギャップに打ちのめされて無駄に疲弊してしまう事もあるでしょう。そもそもその「結果」は自分が本当に求めている「真実」なのでしょうか?結果に辿りつく過程やスピードは人によって異なるうえ、納得のいく結果ではないかもしれません。ただ自分が求めている真実を見据えていれば、どんな状況でも落ち着いて過程を積み重ねていく事ができるでしょう。
このセリフを言った警察官のキャラクターは、暴行犯の指紋を特定するために、暴行犯の凶器であるビンの破片を地道に拾い集めていました。その警察官に対して別のキャラが「そこまでやっても指紋がとれなかったり、犯人を捕まえられないかもしれないじゃないか」と問いかけた後の名台詞となります。
誰もが思う理想的な「結果」は「犯罪者を捕まえる」事で、作中の警察官がやっている事は非効率で望みが薄い行為かもしれませんが「些細な事件のわずかな手掛かりも逃さず犯人を見つけ出す」という警察官のあるべき姿で考えると、一番「真実」に近づいている行為なのではないでしょうか。
人は1人で生きているわけではありません。誠実な意志は必ず誰かに伝播して、いずれ真実に辿りつく事も可能にします。
バチバチBURST「今より弱くなることはない」
『バチバチBURST』3巻25話「今より…」より
壮絶な練習を経てもなお、ライバルにあと一歩届かなかった幕下力士の田上が廃業をほのめかし、自分に才能はあるのかと問いかけた先の兄弟子かつ幕内力士である猛虎の返答。これからもこれまでも自分次第だと現実を突きつけつつも、弟弟子の成長を肌で感じた猛虎は田上に力強い手を差し伸べます。
何かと人は他人と比べがちですが、歩むスピードは人それぞれです、限界なんて誰にも分かりません。止むを得ない事情を除いて、自分が諦めた所が自分の限界です。他人の物差しより短かろうと、自分の物差しは努力する限り伸び続けます。
弱虫ペダル「頑張らないと期待なんかされない」
『弱虫ペダル』34巻RIDE.290「凡人と天才」より
前年度は才能ある下級生の躍進に唇を噛み締めた手嶋は、他のチームメイトと比べ自らに突出した能力が無いことを自覚しながらも懸命な走りで周囲を焚き付け、主将として自らの力でレギュラーを掴み取ろうとする。
自分も・自分だって。みたいな嫉妬は誰だって抱いた事あると思いますが、初めから輝いている人間なんて殆どいません。自分が輝く為には他の人の目に付くまで磨き続けるしかないんです。シンプルながら幅広い人に刺さるセリフだと思います。
ジョジョの奇妙な冒険:一部「痛いのってこわい?」
『ジョジョの奇妙な冒険』1部(4巻)「あしたの勇気・うけ継ぐ者その①」より
臆病者の少年であるポコはいじめっ子にからかわれても何も言い返せず、いつも勝ち気な姉に助けられていますが、姉はポコの今後を思って心を鬼にしてポコの弱気な態度をたしなめます。
人生の真理の一つではないでしょうか。「痛い」を「恥ずかしい」とか「失敗」に言い換えることもできますね。目前の容易に想像できるネガティブに捉われていると、その先の大切な物に目を向けることができません。何かを得る時や守る時には痛みを伴う事は少なからずあり、避けていてばかりでは将来の大切な物を見失ってしまいます。英語でも「NO PAIN NO GAIN(苦労なくして、得るものはない)」という格言があります。
個人的にジョジョ一部はジョジョシリーズの中でトップクラスに好きな章です。ジョジョシリーズの代名詞とも言える展開が二転三転する壮絶なバトルは控えめですが、登場人物間のドラマが二時間映画のような濃密さで何度も読み返したくなります。
覚悟を決めていたり、本質を突いてくる作品やキャラが個人的に大好きなので、おすすめ漫画と同様にかなり好みが偏っている内容になりました。上述した作品はいずれも心身ともに屈強なキャラクターが数多く登場するので、心を滾らせたい人にオススメです。