数年前から単ページの漫画を描き続け、一昨年ごろから単行本の発売とともに注目度がうなぎ上りな新進気鋭のギャグ漫画家、藤岡拓太郎先生を紹介したいと思います。個人的な傑作選と感想も書いていきます。
日常的なシーンに忍び込む非日常
メインのお仕事にされているギャグ漫画は不定期でインスタグラムやTwitterなどにアップされ、1話につき1~3ページで1話完結のオムニバス形式です。
多くの作品の世界観は、ドラえもんやサザエさんくらいの少しレトロな時代感で展開される事が多いです。学校や家庭・若者の何気ない日常の1コマに明らかに歪(いびつ)な何かが忍ばされており、そのギャップが笑いを誘います。その違和感は作品ごとに異なり、人物そのものだったり言動だったり職業だったりで形を問いません。予測不可能な死角からのボケに吹き出すこと間違いなしです。
違和感を具現化する高い画力
絵柄に関しては吉田戦車先生や蛭子能収さんのような、フリーハンドの緩い線で味のある人物や文字を描かれます。いわゆるヘタウマな感じなのですが、全体的に描き込みが凄いので粗さは目立ちません。基礎画力または観察力がかなり高いと思います。
キャラの表情が特に魅力的で、独特の歪な空気感を巧みに具現化しています。原画展も何度か開かれているのですが、表情や文字に関しては修正の跡がかなり見られ、こだわりが感じられました。
単行本が発売中、絵本が発売間近
単行本『夏がとまらない』が販売中です。こちらは芸能人の方を含めて絶賛の嵐で、ギャグ漫画が好きな方は必ず押さえておいた方が良いと思います。
そして絵本『たぷの里』が現在予約受付中になっています。こちらは先生曰く老若男女だれでも笑える作品に仕上げたと、かなりの自信作であることをSNSおよび特設サイトで公言していましたので必見の一冊です。
参考 絵本「たぷの里」特設ページ - 藤岡拓太郎の公式サイト個人的な傑作を4つ選びました
『なにわろてんねん』
これは平成ギャグ漫画の1つの到達点だと個人的に思います。テンポの良い起承転結と発想の突飛さ、タイトルによるフリからのオチなど構成の全てに無駄がない完璧な作品です。皆で大笑いと言う本来オチでも何でもないシーンをオチに昇華する演出力も凄いの一言です。
『ひとつ下の階の部屋に入ってしまったことに気づかずに、そのままソファーに座ったおっさん』
クッソ寒いギャグをかますオッサンという日常感が一瞬で非日常に転回する空気感と、ラスト3コマの表情のインパクトが凄いです、拓太郎先生の魅力を凝縮したようなお手本的な作品です。様々なネガティブな感情が感じ取れるパンドラの箱を開けたような顔がたまりません。
『母の置き手紙』
トドメの「メロンもってる(笑)」で吹き出さざるを得ません。勢いも然り、家族団らんの日常と全員が押入れに隠れる歪さや、弟を弄る姉だが弄られる筋合いは全く無い状況の絶妙なバランスがめちゃくちゃ面白いです。
『歩いてる先にごねてる子供がいても、ちゅうちょなく踏む人』
演出を変えればホラーになり得る設定なんですが、2コマ目のどこを見渡しても緊張感の欠片も無いという半端じゃない高低差が笑いを誘います。
個人的にはシュールと言う括りも違うと思うものの、間違いなく独特の作風なので受け付けない・つまらないと言う方も居るかもしれませんが、もっとたくさんの人に愛されるべき作品だと思うのでブログでオススメ致しました。漫画の殆どはSNSや公式サイトで見られるので気になった方は是非ご覧になってください。
参考 藤岡拓太郎の公式サイト