『デビルマン』実写映画版の感想。最悪の駄作、全てが裏目に出た作品

デビルマソとまで呼ばれる駄作映画、実写版『デビルマン』の感想です。

最高の映画から最低の映画

天気の子という最高の傑作を鑑賞した明くる日に、暑さで頭がやられた私はちょうど2時間ほど時間が空いたのもあって、Amazonプライムで無料動画に含まれている実写映画版の『デビルマン』を鑑賞しました。そちらの感想を記事にします。

面白ネタ系でのネットサーフィンが趣味の方はご存知かと思いますが、本作は2004年に公開されてから今まで邦画史上最低クラスの評価を受け続けている作品になり、それ以降で駄作と評価された邦画が出るたびに決まって比較対象に挙げられる「デビルマン基準」という金字塔を打ち立てました。

19年8月に公開され、その衝撃の展開から物議をかもし「令和のデビルマン」と一部から評された『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の登場で再び注目を浴びていますね。私もユアストーリーの予習として本作を鑑賞する決断に至りました。

何がそんなにダメなのか?

鑑賞したうえで本作のダメな点を簡単に申し上げると、CGと漫画描写を織り交ぜて描かれた主要デーモンの姿以外なにもかもがダメです。誇張なしで本当にダメです。

原作の再現やさらなる昇華を期待して、お金を払い公開当時にスクリーンで観た人の怒りは想像もつかない程この作品はひどいです。

ただその酷さを理解したうえで、半ばコントとしてツッコミを入れつつ、プライムビデオ等のサブスクサービスでスマホをいじりながら観るくらいであれば、話題づくりとして一回観てもいいかなーくらいの印象です。

開始2分でやばい

まず主人公の不動明と飛鳥了の子供時代の回想から物語は始まるんですが、そのカメラワークと子役の佇まいから本作のヤバさがビシビシ伝わります。最中に流れ始める明役の子のナレーションも滑舌が悪くてとても良い(?)滑り出しです。

開幕からラストまでぶっ通しで演技と滑舌にヒヤヒヤさせられます。

余計な情報ノイズが多くて困惑

本作は出演者の大半が素人らしく、また演技指導もしていないのか、素人目に見ても分かる酷い演技や、挿入した意図が全く分からない要素が多く見られます。

地団太する了

学園生活のシーンで、ランニング中に転んだ明に了が一時停止して話しかけるのですが、車のアイドリングみたいに軽くその場で足踏みをしています。こんなの漫画でも殆ど見られない動きなんですが堂々とやってのけています。

海女さん

また海のシーンで海女さんが居ます、ストーリーには全く関係ありません。

うしくん探し

どういう原理で聞こえているのか分からない天からの悲鳴を頼りに明が友人(うしくんもとい牛久。ただの舞台装置のようなキャラ)を探すのですが、まず海に入って水に顔を付けて探します。泳いで潜ってではなく息止めみたいに顔を付けます、そして結局うしくんは森にいました。

ここは本当に「は?」ってなります、書き起こしてる自分が「は?」ってなりました。

絶対弱いデーモン特捜隊

デーモンの存在が世間に知れ渡ってから、デーモン特捜隊という機動隊が登場するのですが、クリーンルームの白い作業服にガスマスクと肘・膝のプロテクターという非常に安っぽい装備で出てきて、最初は素手でデーモンと疑われる人物に対峙します。不憫。

盗撮オタク

序盤からヒロインの牧村美樹を盗撮するやばいオタクのシーンがたびたび挟まるのですが、満足のいく伏線回収はありません。まあ日常のそばに恐怖が潜んでいることは現実でもありますが、フィクションである以上は段階を踏んで異質な存在を視聴者に認識させて欲しいです。

ただ物語後半にて、盗撮によって牧村家にデーモンが居る事の目撃者になるのと、牧村家が暴徒に襲撃される場面で「美樹ちゃんは人間なのに~」みたいなセリフを吐いて居なくなるシーンがあります。

ここから察するに目撃者という舞台装置的な役目と「一般的な倫理観が崩れ、まともじゃなく見えてた人がまともに見える」という表現をするためのキャラだったのかなと思います。もうちょっとスマートな描写の仕方はあると思いますが…。

衝撃のアポカリプスデブ

極めつけに特に有名な一幕ですが、社会が退廃し、ならず者が弱者を傷つけるシーンにおいて、そのならず者が白タンクトップのデブ3人という意味不明な姿で、3人が積み重なったボディプレスで一般人を痛めつけるというさらに驚愕のシーンが脈絡もなく流れます。

ちなみにこのデブトリオはネット上で「アポカリプスデブ」と呼ばれています。

聴覚にも多大なダメージ

主要なキャストがだいたい滑舌に難があります。また演技もひどいのでセリフも棒読みです。さらに言えばセリフそのものも説明口調が多くひどいものです。

  • 「あー、おれ、デーモンになっちゃったよー」
  • 「俺、デーモンに食われちゃったよ」
  • 「じゃあ、食事っ」

有名なのは上の二つですが、個人的に推したいのは三番目です。明がお世話になっている牧村家の父なんですが、一家で食事を始めるときの合図のようです。日本人かこいつ?

明の声

あと本作の代名詞とも言える気の抜けた明の叫び声「ほわーん」がありますね。こちら誇張されてて正確には「んぁーーーーー」って感じです。明はよく叫ぶのですが「あーーー」と全体的に抑揚に欠けます。

明の気の抜けた声はバトル中でも遺憾なく発揮されます。バトルシーン中は明(デビルマン)がアクションをとるたび「んぁっ、ふぉぁっ、うやぁっ!」みたいな声が入り緊張感を削ぎ落していきます。

突然のハードコアラップ

あと劇中歌で突然K DUB SHINEのラップがしっかり流れます。淡々としたラップが抑揚のない演技や盛り上がりに欠ける展開に非常にマッチしていて駄作に花を添えています。

エゴと安直さが感じられる要素

出来の酷さだけじゃなく、スタッフ・キャストのエゴで取り入れたような要素やカメオ出演も見られます。

映画手法で言えばワイヤーアクション、ガン・カタ(拳銃+体術のアクロバットアクション)、日本刀アクションですね。90年代終盤から2000年代初頭はこのような要素を用いたハイクオリティなアクション・バイオレンス映画がどんどん出てきてた時期だったので、それがやりたかったのかなと感じました。

カメオ出演で言えば、小林幸子、小錦、ボブ・サップが何の脈絡もなく、物語には絡まない役で出演します。

アクが強すぎて出演させるにはかなりのリスクを伴う三者ですが、世界観をぶっ壊して(最初から壊れていますが)堂々と出てくるので、上述したハードコアラップも含めて、そういう趣味の方が居たんですね…と何となく察します。

キャストミスと不勉強なウケ狙いとエゴの塊がデビルマンを媒介として世に放たれてしまったのだと私は考えます。

ミーコ編は作品の良心

ただ映画オリジナルの要素で、明と同じく半デーモンとなったミーコと1人の子供にフォーカスを当てた物語も並行して進むんですが、この子役の演技が非常に上手く、またミーコ編の物語がこの2人を中心に進み、余計なノイズ(明とか)が介入しないため、この映画の最後の良心みたいになっています。

ちなみにこの子役が、現代の人気若手俳優の1人である染谷将太くんです。やはり一線級の役者の実力は最初からモノが違うんですね。

しかしこの最後の良心も、終盤のミーコのキル・ビルを真似たようなお粗末なアクションシーンによって、寒いノリの餌食になってしまいます。

一日では書ききれないツッコミどころ

ここまででも結構な情報量だと思いますが、省きながら書いてこの調子です。とりあえず今回はこの辺にして、長期的にこの記事を充実させていこうと思います(何のために)

本作を鑑賞したうえでの予想ですが、ユアストーリーがこれと匹敵するほどの酷さというのは無いと思いました。なぜならユアストーリーはラストを抜きにすれば、まともな映画として見れるクオリティという評価が少なくないからです。

デビルマンはまずまともな映画のスタートラインにすら立てていません。ほわーん!

でも普通の駄作よりは面白いよ!

2022年2月にアクセス数が激増したので調べてみたら『大怪獣のあとしまつ』が駄作で令和のデビルマン現象が再来していたみたいですね。

ユアストーリーもそうなんですが、駄作ぶりで言えば普通の駄作と比べられません。大怪獣のあとしまつをデビルマンにしたいなら、まず山田涼介くんを演技未経験者にして、土屋太鳳ちゃんをみちょぱとかのギャルタレントにしましょう。西田敏行さんはルー大柴さんとかですかね。まずはそこから。

お金をかけた映画としての体裁がそれなりにあるならそれはもうデビルマンとは比較にならないんですよね、作品と脈絡のない趣味嗜好やエゴが見え隠れする必要があります。

でもそこまで突き抜けた作品であるからこそ人々の記憶に刻まれネットミームとしてその名を残しています。

上述したおもしろシーンの通り、淡々と場面が展開し永い時間が過ぎていくのを待つ普通の駄作より、デビルマンは見所に溢れていて、そのネットミームの真髄を知る事ができます。

デビルマン鑑賞者は時間の無駄と口々に言いますが、悪名は無名に勝るという言葉の通りネタに出来るぶん普通の駄作よりデビルマンの方が観る価値はあります。また駄作映画が世に放たれるたびネット上で、デビルマンには敵わないというクソみたいなマウントを取れるようになります。

まとめると、駄作邦画の頂点としてデビルマンが挙げられる度に、どれほど凄いんだろう?って疑問に思ってるくらいなら、観てしまった方が良いと言える迷作です。

後日、原作漫画のデビルマンを読破したうえでその感想と、映画との乖離を記事にしています。

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2 COMMENTS

佐藤

映画は映画好きのためのみに存在するものではない。原作好きのための映画があってもなんの問題もない。
演技に関しては「全然ダメ」と評価して構わないが、それはこの映画の欠点の一つでしかない。どんな映画でも欠点の一つや二つある。この映画にも欠点があったと言うだけのことだ。
原作とは異なる展開も少なくないが、原作の世界観は十分引き出されている。原作は有史以来日本人が生み出したものの中で最も優れたものの一つで、日本の映画やドラマにはこの原作に匹敵するものは存在しない。その原作の世界観を再現できているのだから、演技の酷さはあるものの日本の実写映画の中では上位に位置付けられるものである。ほとんどの邦画はこの映画よりも駄作であるというのが正しい評価だ。
落語は教養がなければ楽しめない。それと同じで、この映画は原作を知らなければ楽しむことはできない。教養がないのと同じである。

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ひろきゅん

はじめまして、私も映画鑑賞後に原作を読みましたので、原作の素晴らしさについては同意します。また大半の邦画は駄作という点においても同じ考えです。
ただ原作付き映画となると、どこに評価の重きを置くかについては人によって大きく変わると思います。私個人としてはやはり演技とキャストが目についてしまうので原作読了後でも及第点とは言えませんでした。
佐藤様の仰る通り原作付きは原作を含めて評価するという考え方は正しいですが、自身の理想や原作の展開との乖離で大きく減点してしまう方も居るんじゃないかと思います。私もどちらかというと後者の見方をしてしまう人間です。
ネタ寄りに書いた本記事を読んで不快に思われたのでしたらお詫び申し上げます。

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